2016年04月15日

四月花形歌舞伎 明治座

昼の部に出かけた。女殺油地獄の徳兵衛役で出ている嵐橘三郎丈を贔屓にしているので、まあ、若手のはどうかと思いつつ出かけた。私は仁左衛門のも染五郎のも見ているのでまだまだだろうと思っていたのだ。ところが、これが良かった。お吉の七之助も色気があって、運びに無理が無い。与兵衛の菊之助も上出来だった。義太夫に乗った動き、台詞。全体のアンサンブルもいいので引き込まれる。精進した芸はお客様の心を動かすと、つくづく思う。
勘九郎の末広がりは歌舞伎らしい華やぎをみせて楽しませた。国生が成長した姿を見せる。鶴松も可愛い出来だ。それから、菊五郎劇団の地方は流石で、踊りが映える。それと葛の葉の七之助、哀しみと母性がでていて悪く無いが、ふと見せる狐の妖しさがもうほんの少し首の動きと手元に出ると云う事なしだろう。もっとも、葛の葉のこの柔らかみと色気は玉三郎に似ているような感じもするので、このように演じているのかもしれない。それにしても、すでに彼らの時代なのだ。いい芝居を見た。


 養父の徳兵衛は主の貫禄も必要だが、もともと奉公人の立場だった感じも出さなければいけない。そして、この真っ正直な人柄ゆえに放蕩息子の与兵衛が養父にこれ以上の迷惑をかけられないと罪を犯すことになるわけで、難しい役どころ。橘三郎の徳兵衛は、家族の愁嘆場で、息子を打った後に座り直す仕草に律儀さが出ており、この役の腹が見える。出て行った息子の後ろ姿を追いかけ、その姿に頭を下げる悲哀も滲んで、お吉の家を尋ねて女房が鉢合わせて嘆き合う姿には、ツンと鼻にきた。
 それを、台詞のない七之助はきちんと受けるので、ますます後の不条理さが際立っていいのだ。つくづくいい役者になったと思う。与兵衛に懇願されて、一度は鍵に手をかけるが、先の野崎参りでのことがあるので思いとどまるのも自然だし、断るお吉に与兵衛が心変わりしていく心情の動きも丁寧で納得がいく。菊之助の目の動きがいい。仁左衛門の与兵衛を思い出す。監修が仁左衛門なので、しっかり指導を受けたのだろう。だんだんと気持ちが変わっていくにつれて目つきも変わっていくのだが、仁左衛門はゾクとするほどそれが素晴らしかった。菊之助の顔や仕草は若い頃の菊五郎にそっくりなのだが、芸がこうして引き継がれていくのも歌舞伎の見所だろうと思う。
 それにしても、人殺しが哀しくも美しい。近松門左衛門という人は凄いね。ちょっとした掛け違いで不幸が生まれる。これは役者冥利の芝居だ。歌舞伎ならではの世界…ですね…。

horikawa_g at 17:12コメント(0)トラックバック(0) 

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