2009年01月20日

像引

数年前、国立劇場の売店で売っていた浮世絵(豊国)葉書に像引があった。それからずっと、どんな芝居か観てみたいと思っていた。それが叶ったのは幸運だった。なにしろ、めったにやらない演目なのだ。大正二年に復活上演され、昭和五十七年の公演以来ということになるらしい。しかも、団十郎丈の病後の復帰舞台。喜びもひとしおなのである。歌舞伎十八番は、なんといっても団十郎丈の大きさ、華があってこそなのだ。あのりっぱな顔と大きな目で華やかな舞台がいっそう華やかになる。そして、私にとって十一代目団十郎の優しい眼差し懐の厚さを感じさせてくれる芸風は、なにものにも代え難いものだ。勧進帳、助六、毛抜、どれも素晴らしかったが、像引は特に忘れられない舞台となった。     
ところで、この像引での衣裳なのだが、紋に一文字が入っていた。浮世絵をみると、やはり誰もが知る団十郎家の紋、三升である。昭和五十七年の舞台写真は紫の一文字の入った三升の紋になっているが、役者は尾上松緑なので団十郎家に遠慮したものであろうか。この三升に大きな一文字が入っている紋は初世市川団蔵のもので、二代目団十郎と不仲になったのがきっかけで、三升に大きく一文字を入れたと「三都役者世々の接木」に書かれていると初代清信の浮世絵の解説にあった。十八年後に団十郎と團蔵が共演して和解し、もとの三升に紋を戻したとある。そうであるならば、宗家が演じているのにこれはどうしたわけか? なにか理由があるのだろうか…そういえば、他にも大きな一文字を入れた紋を見たことがるような気が…誰か詳しい方、お教えくださいませ。 


horikawa_g at 15:00コメント(0)トラックバック(0) 

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